薬剤師の仕事内容には、薬の調剤や患者への薬の説明や薬の管理だけでなく、医療チームの一員として患者の健康をサポートすることも含まれています。薬剤師の人数が不足しないよう配慮することは、患者に適切かつ安全な薬物療法を提供するうえで欠かせないポイントです。
薬剤師の人数の推移
令和4年から過去10年間を見てみると、日本の薬剤師の人数が増加傾向にあることがわかります。※1
これには高齢化社会化と医療ニーズの多様化にともない、薬剤師の需要が高まったことが影響しています。例えば、令和2年には約32万人の薬剤師が届出を出しており、これは2010年の約27万人と比較して約5万人増です。※2
※1厚生労働省(令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)
※2厚生労働省(令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況:結果の概要)
地域別の薬剤師の分布
都市部と地方とでは、薬剤師の人数に差があります。都市部では薬剤師の数が多く、医療機関や薬局も多いため、患者への対応をスムーズに行なえます。
それに対し、地方では薬剤師の数が少なく、医療提供体制に課題が残っています。薬剤師の需要と供給の地域差をなくすためには、地方への薬剤師の派遣や地域医療支援の強化が必要です。
薬剤師の人数と医療提供体制
薬剤師を必要なだけ確保できるかは、医療提供体制に大きな影響を与えます。病院薬剤師は入院患者への薬の管理や調剤を担当し、薬局薬剤師は外来患者への薬の提供や相談を行ないます。
薬剤師の人数を十分に確保し、チーム医療に参画してもらうことで、患者へのサービスの質や医療の安全性を上げることができるでしょう。 一方で、薬剤師の数が不足している場合、薬剤師一人あたりにかかる負担が増え、医療ミスが生じる可能性が高まります。
薬剤師の人数と教育機関
薬剤師の供給に直接影響するのが、薬学部の定員数と卒業生の人数。薬学部の定員が増加すれば、薬剤師国家試験の受験者数も増加し、合格者数も増えます。実際に薬剤師の人数は増加しており、医療現場での人材不足は解消されつつあります。
しかし、その裏で入学定員を割る薬学部・薬科大学があったり、入学後の進級率や卒業留年率に差があったりするのも事実です。いかに質の高い教育を提供し、実務経験を積む機会を確保できるかが課題となるでしょう。
薬剤師の人数と将来の展望
日本の人口が減少していることから、薬剤師の需要は今後減少していくと予想されています。働き方も変化すると予想されており、調剤薬局やドラッグストア、病院などでの需要が減少し、登録販売者の需要が高まります。
また、在宅医療や地域包括システムに携わる未来を見据えて、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師としての働きが注目されています。
新しい医療技術やサービスの導入により、薬剤師の役割も多様化しているため、薬剤師には人員増加だけでなく、専門的な知識の習得やスキルの向上が求められるでしょう。
まとめ
薬剤師の人数は、医療チームの質に影響をおよぼす重要な要素です。過去10年間で薬剤師の人数は増加していますが、将来的には飽和状態に陥ることが危惧されています。地域差をなくすためにも、薬剤師を志す学生たちに質の良い学びを提供できる体制を整えることが課題です。